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僕と小百合の物語 ブログトップ

僕と小百合の物語 3 [僕と小百合の物語]

第3章


『小百合ちゃん、まぁとりあえず座ったら?

今ちょうど話し相手がいなくて暇してたのよ』


『はい、喜んで』


んな事ぁ良いからよぉーーー!息子が電子レンジになったって言うのに、話し相手がいなくて暇だと?ワイドショー見とけワイドショー!!

そんな僕の思いは勿論届かず、順調に世間話は進んでいく。
しかし、

『あっ、そう言えば昨日お父さんが美味しい肉まんを持って帰って来たのよ』

おっ?僕の出番だ!そう言えば昨日の夜、父が嬉しそうに袋を抱えていたっけ。
父、グッジョブ!


『いやそんな…悪いですから…』


悪くないよ!小百合!遠慮しないで食べろって!僕の熱い思いを届けるから!


『そんな遠慮なんかしなくて良いのよぉ。私一人で食べたってつまらないんだから』


『じゃあ…お一つ頂けますか?』

小百合が笑顔で言う。



母…グッジョブ!




『小百合ちゃんに食べてもらった方が肉まんだって喜ぶわ。一樹なんか味わうって事を知らないから、何を食べても間抜けーな顔してるんだもの』





…また前言は撤回だ。母よ。元の姿に戻ったら覚えておけよ…





そして母が私の髪の毛を掴み、あたため2分と押した。




うーん…どうするべきか…。


続く。

僕と小百合の物語2 [僕と小百合の物語]

第二章


最初はもちろん電子レンジになったとは分からなかった。

だけどそれを理解するのにそんなに時間はかからなかった。
だって起きたらいきなり母親に捕まれ、髪の毛を捻られ、

その一分後に僕は自然とチーンと聞き覚えのある音を出したからだ。

それに加え、ずっと台所が見えているし。



一番気がかりなのは僕はこのままずっと電子レンジのままなのか?

と言う事だけど、それ以外にも気になる事はたくさんある。

その一つに人間の僕は一体どうなっているのか?


が気になった。


何せ僕がこの姿の間に、奴(と言うか僕)がいきなりチーンチーンとか鳴り出したら病院行きは確実である。


うーん…何とかして知る術はないか…

僕は考えた。でも無いのである。だって動けないんだもの。
僕は途方に暮れ、キッチンを眺めた。

このままずっと電子レンジのままだったらどうしよう?僕はずっと家族に温かい食べ物を提供して人生を終えるのか?そして僕がいなくなった家族の生活を眺め続けるのか?


ヤバい。泣けてきた。でも正確に言うと泣けてはいない。だって涙出ないもの。


と、そこでキッチンの横にある電話が鳴った。


『小百合だ!』

僕は直感した。小百合は心配性な所があり、僕が携帯電話に出ないと家に電話をしてくるのだ。

多分大学が終わっても連絡が無いから心配したんだろう。

愛されてるなぁ…僕…

こんな姿になってもそんな事を考えていたら母親が電話を取った。

ここが勝負所である。母よ、頼むから小百合を家に呼ぶんだ。


『はい、今井でございま…
あらぁ小百合ちゃん。

どうしたの?

あぁあの子ね。まだ寝てるみたいよぉ。起こすのも面倒臭いからそのままにしてるけど…


うんうん…じゃあ待ってるわね

はーい、さよならー』








グッジョブ!


良くやった母よ。



『全くもう…そう言えばあの子まだ寝てるのね…
まぁ小百合ちゃんが起こしてくれるならあの間抜けな寝顔を見なくて済むから良いわ』


…前言は撤回だ。母よ、次にチンする時は火傷する位してやるから覚悟しておけよ。


そうして少しまたキッチンを眺めているとインターホンが鳴った。


母が小百合を出迎えにいった。

『小百合ちゃんいらっしゃい』

『おじゃまします』


ーここからが本当の勝負所であるー







続く

僕と小百合の物語 [僕と小百合の物語]

僕は最早、僕でなくなったと言った方が良いのかも知れない。




僕の彼女…名前は小百合と言う。


小百合は読書や映画鑑賞が好きな女性だ。



ゆっくりと、小さな声で話す所謂おっとり系の女性。


僕は、おっとりとした女性が好きなのだ。
…今の僕は女性がどうだとか言う資格は無いのだろうけど。


話を戻すと、そんな訳で僕と小百合のデートは専ら映画館で映画を楽しんだり、

カフェで見た映画や小百合が読んだ小説の話を僕が聞いたりする物になる。



女性の話を聞くのが億劫がる同級生が多いが、


僕は小説は小百合から話を聞いて興味が湧いた借り物しか読まない。


つまらない本を買うのが嫌なのだ。


だから、小百合の話を聞くのは本屋さんで本を選んでいる様な感覚で楽しむ事が出来る。


(同級生はカラオケだとか海だとかドライブだとかに遊びに出掛ける事もあり、僕は自分は大人な人間だと自惚れていたけれど、良く考えてみるとただ根暗なだけかも知れない。)









今日のデートでも小百合は読んだ小説の話をしていた。




『最近読んだ小説でね、とっても面白い話があるのよ』


『どんな話?』


『あのね、付き合ってるカップルの中身が入れ替わっちゃうの。』


『うーん…いくらカップルと言ってもプライバシーが無くなっちゃうね』


『フフ。そうなの。それで2人は最初はたくさん苦労するんだけどね』


『それで、2人は入れ替わったままなの?』


『そう、入れ替わったまま、結婚して話が終わるの。
それって素敵だと思わない?』


『素敵って、入れ替わったままでもお互いの気持ちが変わらない事がかい?
だとしたら僕だって自信があるよ』


こんな歯の浮くような台詞を軽々口に出来るのが僕の良いところなのである。


『じゃあもし私と一樹君が入れ替わっても一樹君は私を思ってくれるの?』



『そりゃもちろんさ。』


これは僕の本心である。



『でも一樹君は入れ替わった苦労が分かってないからなぁ…』


『信じられないのかい?じゃあ、その本を貸しておくれよ』


『じゃあ会う時持ってくるわね』




『うん、その時も今と同じ気持ちに決まってるけどね』











…僕は入れ替わったままでも小百合の事を愛している自信があった。


今でもそれは変わらない。







だけどそれはもう遠い夢物語になったみたいだ。






何故なら僕はもう話す事さえ出来ない。










僕は小百合と人格が入れ替わったのではなく、





電子レンジになってしまったのだ。







続く。
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